Mystisea

〜運命と絆と〜



序章


00 終わりは始まり







「さぁ早く お逃げください!あとは貴方だけです!」
 青年が叫 んだ。その場所にいるのは僅か四人。
 たった今 叫んだ青年と、その傍らにいる小さな少女。
 そして二 人の少年。
「だが!」
「貴方の気 持ちも分かります。ですが貴方は生き延びなければならないのです!」
 すでに部 屋の外にも多くの足跡が聞こえてきた。恐らくこの城はすでに包囲されてしまっただろう。
 逃げろと 言われた少年は決心したようにもう一人の少年を見つめる。
「すまな い……お前一人残していくことを許してくれ……」
 その瞳は 痛ましげに揺れている。
「いいので す。貴方が生きてさえくれれば……」
「すまな い……」
 少年はも う一人の少年の決意を感じてもう一度謝る。そして自分も決意したような顔を見せた。
「――――」
 少年が青 年の名を呼ぶ。
「その子を 頼む……」
「分かりま した……」
 まだ幼い 少女には今の状況がよく分かっていなかった。けれども何かを察知したかのように悲しい顔をして泣きそうになる。
「もう時間 がありません」
 その言葉 に少年はハッとする。
「早くお逃 げください。今からならば彼らにも追いつけるはずです」
 外の足音 はだんだんと近づいてくる。最後に少年はただ一人残る少年を見た。言葉は交わさなかったが想いは通じる。そして少年と青年と少女は部屋の抜け道を通って逃 げていった。
「どうかご 無事で……」
 一人残さ れた少年はみんなが出て行った方を見て呟いた。そして顔を上げて足音が聞こえる扉のほうを向く。それと同時にその扉は勢いよく開かれた。そこには多くの少 年を狙おうとしている輩がいた。少年はすかさず彼らに向かって魔術を放つ。
「ここから先は誰一人通しはしない!この聖王国の王――アルディオン=レーヴァン=ゾディアが!!」